第237回 箱階段

中村軒に嫁いできて「エエなあ・・・」と見上げたんは箱階段です。


階段と戸棚が一緒になってて「こんなん今の時代に作ったら家一軒建つゆうことやで」とオジイちゃんの自慢でした。

 

 

この階段の下で卓袱台(ちゃぶだい)を出してごはんを食べてたさかい、吹き下ろしてくる風が寒いときは、

上段のすぐ下の板がひっぱれるようになってて、風除けになるし、上から二段目は板が外れるように

作ったあって、隠し金庫にも使われてました。

 

昔は借用書などを入れてはったみたいやけど、今中を探したら叔父のおそまつな通知簿が出てきた。

他の引き出しはたんすのかわりに使える

 

 


「部屋と家具を置かへんと家が広う使えまっさかい」

というのがおばあちゃんの美意識で、無駄を省いた合理性が京都人の矜持やったんやろ。

 

箱階段の前の大黒柱は、一尺以上ある檜を

「商売人がそない立派なもん使たらあかんゆうて9寸に落としたんや」とくりかえし聞かされた。

 

黒光りするよう磨き上げるのが嫁のツトメやと言われる。


たまに磨いてると近所のオバアさんが来やはって「ようおきばりやすなあ。エエお嫁さんもらわはって」
その後の姑の言葉が聞き捨てなりまへん。

「まあまあ今日びのことやし、『つろく』してたらええとせんなりまへんやろ」

 

つろくてなんや?
(ほんまやったらうちの息子にももっとエエ嫁さんをもろてもおかしくないのやけど)
そんな気持ちがはいってるような言葉やおまへんか?

 

「つろく」を辞書でひくと「能力・相応・つりあい・調和・一致・バランス」とあって、悪い意味では

ないのやけんど、どうも悪意を感じる。

 

あるエライ先生は「つろく」ゆうのんは分相応と解釈します、とゆわはる。

一尺以上ある檜の木を商売人にはつろくせえへんと9寸に落とした。
ちょっとピントはずれの嫁やけど、うちの息子にはまあまあつろくしてると諦めなあきまへん。

そんなイメージやろか。


なんちゅうややこしい京都弁やろ。

 

 

そやけどエエように考えたら分相応ゆうのは無理のない生き方なんかもしれん。
立派な出来すぎる嫁はんもらうと「あ〜しんど。グチも言えへんがな」となりまっせ。

能力以上の有名校へ入っても幸せになるとは限りまへん。

 

昔の人はそんなんみんなひっくるめてつろくした生き方をしようとしてはったんに違いない。

 

秋には中村軒も工事が始まります。
まず桂の地につろくした建物内容になります様にと願うばかりです。

 

来月こそはコロナ退散となります様に。

めでたしめでたし。


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